浜松オプトロニクスクラスター 次世代の産業・医療を支える超視聴イメージング技術の研究と産業への展開
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使いやすく、医師と患者を助ける画期的な“内視鏡手術用ナビゲーション装置”を開発


【ポイント】
従来の装置は主に脳神経外科手術を対象にした外国製で、高価でありながら位置合わせに15分もかかり使いにくいため、大きく普及を妨げていた。しかし、内視鏡手術のトラブルが多発する中、より安全に手術を行えるナビゲーションの普及は社会的要求である。今回開発した装置は、手術前に撮影したCT画像から合成した顔面の表面形状と、光で正確かつ迅速に撮影できる3次元スキャナを用いて計測した3次元データとの、自動的な位置合わせを3分以内で完了する。1台のスキャナで手術中の器具の位置も自動的に計測し、器具の先端位置を自動表示できるようにした。これにより、脳や眼に近く手術中のトラブルが致命的となる副鼻腔の手術を、安全かつ正確に行える使いやすい国産のナビゲーション装置を実現した。
【研究開発の経緯】
耳鼻咽喉科(じびいんこうか)で特に手術件数が多い副鼻腔(ふくびくう;顔の骨の中にある洞穴状の複雑な構造をした部分で、中は空気で満たされている。この部分に炎症がおこると副鼻腔炎と呼び、ここに膿がたまる病気が蓄膿症である。近年アレルギー性も含めて増加している)の内視鏡手術に使う全く新しいナビゲーション装置の試作機が、浜松地域知的クラスター創成事業において、浜松医科大学光量子医学研究センター、静岡大学情報学部、地元企業のパルステック工業梶E潟Aメリオとの産学共同研究により世界で初めて開発された。
この研究は、寺川進(てらかわすすむ)教授と山本清二(やまもとせいじ)助教授が、知的クラスター創成事業が始まった5年前から、医療機器としての実用化を目指して産学共同で研究を進めていたものであり、浜松地域の知と技の結集ともいえる。
【本技術の特徴】
【安全で正確な手術にはナビゲーションが必要】
 内視鏡手術のトラブルが多発し社会問題化する中、安全な手術が行えるよう、いわば、カーナビゲーションのように手術操作を支援する手術ナビゲーションの普及は社会的要求である。特に耳鼻咽喉科における副鼻腔炎に対する副鼻腔内視鏡手術は件数も多く、手術する場所のまわりには脳・眼など重要な臓器があり、狭くて全体像を把握しにくい視野で手術することになるため、その必要性が医師側からも強く叫ばれていた。しかし、従来のナビゲーション装置は内視鏡手術用ではなく、主に脳神経外科手術を対象にした外国製で、高価でありながら位置合わせに15分もかかるなど、使いにくいため大きく普及を妨げていた。

【従来のナビゲーションは使いにくい】
 位置合わせに時間がかかる以外にも、手術前に撮影するCT検査で患者にマークを付けて撮影する必要があったり、手術中に患者が動かないようバンドなどで固定する必要があったりするなど、患者にとっても苦痛のあるナビゲーション装置であった。これらは、手術中に患者や手術器具の位置を測るのに、“点”で検出する方式を採用していたためであり、医師にも患者にも優しいナビゲーション装置の開発を妨げていた。

【使いやすいナビゲーションを可能にした技術】
 従来の手術ナビゲーション装置の欠点を補い、患者を固定する必要がなく、位置合わせ操作が自動化されて短時間でできる装置の開発に向けて研究を行ってきた。今回開発したナビゲーションは、光で正確かつ迅速に撮影できる3次元スキャナを用いて、患者の顔面の形状を“面”として検出した3次元データを用いる。そのデータと手術前に撮影したCT画像から合成した顔面の表面形状とを、形状をマッチングさせることにより自動的な位置合わせを行い、位置合わせが3分以内で完了することを実現した。
【試作装置の概要と特徴】
手術ナビゲーション操作の流れ(資料@)と試作装置の概要(資料A)を説明する。
1) 手術前までに患者のCT撮影を行う(これはカーナビゲーションでいえば地図を作る作業)。この場合、従来の製品とは違い、患者にマークを付けて撮影し、そのマークを手術時まで残す必要がなく、患者に苦痛がない。
2) 撮影したCT画像をナビゲーション装置(写真@)に読み込ませる(この操作は、カーナビゲーションでいえば最新の地図を入れるのと同じ)。
3) 手術室で患者に麻酔がかかって手術の準備ができたら、3次元計測スキャナ(写真A)を用いて、患者の顔面の表面形状を計測し、あらかじめ読み込ませておいたCT画像の表面形状との位置あわせを行う。位置合わせは自動化されていて、従来の製品(15分)に比べて著しく短縮され、3分以内で完了する。位置合わせが完了すると、手術台の上での患者の空間位置を示す座標と手術前のCT画像の座標が一致する。
4) 手術開始後は、必要な時に3次元計測スキャナ(写真A)により、手術器具の標識球(写真B)を撮影し自動的に位置を計算した上で、手術器具の先端位置を自動的に計算して術前CT画像に分かりやすく表示する(写真C)。撮影から表示まで約2.5秒で完了する(これは、カーナビゲーションでいえば、今どこを走っているか、これからどの方向へ行けばいいかを示してくれるのと同じ)。
5) 手術終了まで上記4)を繰り返すが、途中で術者が患者を動かした場合でも、手術器具と共に顔面の表面形状も同時に撮影するので、自動的に位置合わせを修正することができ、患者の動きに追従できる(この機能のソフト上の処理法は現在開発・検証中)。この機能は従来のナビゲーションにはない画期的なものである。
6) 精密な人形を使った模擬手術操作の結果で、約1.5ミリの精度で手術器具先端の位置を正確に表示できる。
【試作装置の今後と応用の可能性】
今回開発された試作機による撮影は、浜松医科大学付属病院の倫理委員会の承認を得ているため、今後は実際の手術室において計測する実用化の前段階に入る。製品化を目標に、より高い精度、より短い操作時間、より良い操作性を目指して、さらなる共同研究開発を続けていく。
今回の試作装置は、耳鼻咽喉科の副鼻腔内視鏡手術用であるが、耳鼻咽喉科に限らず、脳神経外科、口腔外科、形成外科など頭頚部(とうけいぶ;首から上の身体の総称)の手術に適応できる。また胸腹部の手術に対しては、手術中に身体の形状が大きく変わるという問題に対処しなければならないが、広く内視鏡手術用のナビゲーション装置となりうる可能性を持っている。さらに、医師の手術トレーニング装置としての教育的用途にも有効で、広く外科手術に貢献して医師と患者を助ける画期的な医療機器になるであろう。

写真
3次元計測スキャナ
写真
手術器具先端(黄色四角部分)表示例


【資 料】
( 141KB )【PDF形式】


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